ごあいさつ
アカの人々、コンゴ人民共和国リクアラ州 1988
1988年、はじめてコンゴ人民共和国(現在はコンゴ共和国)北東部の薄暗い熱帯雨林の奥深くに分け入り、森の民と生活をともにしたときに感じた驚き、慣れ親しんできた風景や時間の流れとはまったく異質の日常が実在することを五感で了解したときの驚きは今でも忘れられません。 その後、熱帯アフリカの様々な国で調査を続けていますが、最初ほどの衝撃はないにせよ、いつどこへ行っても、フィールドは何かしらびっくりするようなことを用意して待っていてくれます。 書物のなかの世界はけっして嫌いではありませんが、しかし、五感を通じて自己存在に揺さぶりをかけてくるような驚きは、書物には隠されていません。 最近、グローバリゼーションという語が、世界の文化の均質化を推し進める趨勢といった文脈で使われることが多いですが、そんな訳知り顔の表現のはやりすたりとは無関係に、じっさいの世界はまだまだ広くて、そして多様です。 若い人には、このことをぜひ自分の目と耳と肌で感じとって、自らの体験として理解してほしいと思いますし、私自身も人類学という学問を通してさまざまな生のありかたを全身で受けとめ続けていきたいと願っています。 (富山大学研究者総覧,1999より) |
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